YouTuberのへずまりゅう初公判
今回へずまりゅうは、アパレル店で購入したTシャツが偽物だと経営者に罵声を浴びせて返品を迫り、その際の動画を無断でユーチューブに公開したとして、威力業務妨害罪と信用毀損罪で逮捕されました。さらに、スーパーで会計前の魚の切り身約430円相当を会計前に食べて窃盗罪にも問われています。
この初公判で、へずまりゅうは、窃盗罪については「商品を食べてから精算するまで1分40秒と迷惑の程度は低い。直ちに精算するつもりだった」として無罪を主張しました。
皆さん、この報道をみてどう思われたでしょうか?
窃盗罪の成立要件(客観面)
窃盗罪が成立するには、①客観的に、他人の占有する物を、窃取したことが必要です。
占有とは、支配、管理と考えてください。今回の件では、会計前の商品は、スーパーが支配し管理していますので、スーパーにその商品の占有がありますね。スーパーはへずまりゅうにとって他人、つまり他人の占有する物といえます。
次に、窃取したこと。これは占有している者の意思に反して、その占有を自分に移すことを意味します。かみ砕いて言うと、占有している者の意図しない形で、その支配権を事実上自分に移すことです。今回の件では、魚の切り身を会計前に自分の胃袋に入れているのですから、その商品の占有は、スーパーとしては会計前に占有を移転させる気がないにもかかわらず、完全にへずまりゅうに移転したわけです。
窃盗罪の成立要件(主観面)
次に、問題になるのは、その人の主観面です。まず、上に述べた客観面を認識していることと、不法領得の意思といって、その物を利用したり売ったりすることを意図したという意思が必要です。今回の場合は、食べ物である魚の切り身を食べたわけですから、もちろんその意思は認められるわけです。
違法性阻却事由
では、今回のへずまりゅうの主張は何なのかと思われると思います。実は刑法では、犯罪の成立要件を満たしても、違法にならない場合があります。例えば正当防衛なんかもそうです。その中に、可罰的違法性がない場合、違法にならないという議論があるんです。その違法性が軽微であることを理由に、罰するまでの違法性はないという議論です。例えばね、人のお家いってティッシュ一枚を勝手に使ったら窃盗だと騒ぎ立てられた場合とかですかね。ティッシュ一枚はものすごく安くて、そんな迷惑かからんでしょというようなイメージです。今回の件で、「商品を食べてから精算するまで1分40秒と迷惑の程度は低い。」と述べているのはこの部分かなと思います。推測ですが。
ただ、この可罰的違法性、判例上確たる理論が構築されているわけでもありません。そうそう認められるものではないわけです。加えて、今回、商品もティッシュ並みに安価ということはできませんし、この言い訳認めていたら、スーパー全体が試食場みたいなりますよね・・
ということで個人的には認めにくい主張であると思います。